家族がいる人でも、亡くなった後の手続きは簡単ではありません。葬儀の手配、死亡届、火葬、納骨、公共料金の解約、遺品整理など、短期間で多くの実務が発生します。親族に頼れない人にとって、死後事務を誰に任せるかは重要な終活のテーマです。

死後事務とは何を指すのか

死後事務とは、人が亡くなった後に必要になる実務的な手続きのことです。財産を誰に渡すかを決める遺言とは異なり、死後の生活まわりの整理や関係先への連絡、葬儀・納骨の実行などを指します。

具体的には、葬儀社への連絡、火葬や納骨の手配、病院や施設への支払い、賃貸住宅の明け渡し、公共料金や携帯電話の解約、役所関係の手続き、遺品整理、親族や知人への連絡などがあります。

これらは一つひとつは小さな手続きに見えても、亡くなった直後の限られた時間に集中します。家族が高齢だったり、遠方に住んでいたりすると、実務負担は大きくなります。

死亡後すぐに必要になる手続き

死亡届は、死亡の事実を知った日から7日以内に提出する必要があります。死亡届が受理されると、火葬や埋葬に必要な許可証の手続きへ進みます。実際には葬儀社が提出をサポートすることもありますが、誰が届出人になるのか、誰が葬儀社とやり取りするのかを決めておく必要があります。

病院で亡くなった場合は、医療費の精算や荷物の引き取りも発生します。介護施設に入居していた場合は、居室の明け渡し、利用料の精算、私物の整理なども必要です。

葬儀と納骨は希望を残しておく

葬儀の規模や形式は、遺された人が迷いやすい部分です。一般葬にするのか、家族葬にするのか、直葬にするのか。菩提寺へ連絡するのか、無宗教で行うのか。本人の希望が分からないと、周囲は判断に困ります。

納骨先も同じです。すでに墓じまいをしている場合は、永代供養墓や納骨堂、樹木葬などの契約内容を分かる場所に残しておく必要があります。契約書の保管場所が分からないと、死後に手続きが進まないことがあります。

死後事務委任契約で依頼できること

死後事務を第三者に依頼する方法として、死後事務委任契約があります。これは、自分が亡くなった後の事務を特定の人や事業者に依頼しておく契約です。

依頼できる内容は契約先によって異なりますが、葬儀・火葬の手配、納骨、行政手続きの補助、医療費や施設利用料の精算、公共料金の解約、家財整理、関係者への連絡などが対象になることがあります。

死後事務委任契約を結ぶ場合は、単に「死後のことをお願いします」と伝えるだけでは不十分です。どの葬儀社を使うのか、葬儀費用の上限はいくらか、遺骨をどこへ納めるのか、親族へ連絡する範囲はどこまでかなど、具体的に決めておくことが重要です。

遺言や任意後見との違い

終活では、死後事務委任契約のほかに、遺言、任意後見、財産管理契約などの言葉も出てきます。役割が違うため、混同しないように整理しておきましょう。

遺言は財産の承継を決めるもの

遺言は、預貯金、不動産、有価証券などの財産を誰に渡すかを決めるためのものです。葬儀や納骨の希望を書くこともできますが、遺言が確認されるタイミングによっては、葬儀が終わった後になることもあります。

任意後見は生前の判断能力低下に備えるもの

任意後見は、認知症などで判断能力が低下したときに備える制度です。生前の契約や財産管理に関わるもので、死亡後の葬儀や納骨を直接担うものではありません。

死後事務は亡くなった後の実務を担うもの

死後事務委任契約は、亡くなった後に発生する実務のための契約です。遺言や任意後見と組み合わせることで、生前から死後まで切れ目なく備えやすくなります。

墓じまい後の納骨先にも関係する

墓じまいをした人は、自分の死後の納骨先も考えておく必要があります。先祖代々のお墓を撤去した後、自分の遺骨をどこへ納めるのかが決まっていないと、死後に周囲が困る可能性があります。

永代供養墓や納骨堂を契約していても、納骨手続きをする人がいなければ実行できません。契約書、管理者の連絡先、納骨費用、必要書類の保管場所を明確にしておき、死後事務を担う人に共有しておくことが大切です。

契約前に確認したいポイント

死後事務を依頼する場合は、費用だけで判断しないことが重要です。対応範囲、緊急時の連絡体制、預託金の管理方法、解約時の返金、事業者が対応できなくなった場合の体制などを確認しましょう。

特に、葬儀や納骨の費用を事前に預ける契約では、そのお金がどのように管理されるのかを確認する必要があります。契約書をよく読み、不明点があれば専門家や消費生活センターなどへ相談してから判断することが大切です。

死後事務は、家族に迷惑をかけないためだけのものではありません。自分が望む葬儀や供養を実現するための準備でもあります。お墓、葬儀、納骨、役所手続きを一つの流れとして考えることで、終活の具体性が高まります。

出典:法務省消費者庁国民生活センター