老後資金対策として株式投資が気になる一方で、「値動きが大きそう」「定年後に始めるのは危ないのでは」と感じる人も多いはずです。株式投資は選び方を誤ると負担が大きくなりますが、考え方次第では老後資金対策の一つになり得ます。

株式投資は老後資金対策の万能策ではない

まず押さえたいのは、株式投資は預貯金より高いリターンが期待できる一方で、元本割れの可能性があるという点です。金融庁も、株式や投資信託などの運用商品は預貯金より高いリターンを期待できる一方、元本割れのおそれがあると説明しています。老後資金対策で株式投資を考えるなら、「増える可能性がある商品」であると同時に「減る可能性もある商品」だという前提を外せません。

そのため、老後資金のすべてを株式で持つのは安定重視の考え方とは言いにくくなります。株式投資を取り入れるなら、生活費を守るお金と、長く持てるお金を分けたうえで考えることが重要です。

株式投資が向くのは「すぐ使わない資金」

老後資金の中でも、数年以内に使う予定があるお金は、値動きの大きい商品に置きすぎないほうが安心です。たとえば、当面の生活費、医療費の予備、住宅修繕の資金などは、必要な時に価格が下がっていると困ります。株式投資は、そうした近く使うお金より、十年単位で見られる資金の一部に向いています。

老後でも「時間」は大切な要素

株式投資の不安は、始めた直後の値下がりで大きくなりやすいものです。金融庁は資産形成の基本として、長期・積立・分散投資を挙げています。つまり、安定重視で考えるなら、一括で勝負するより、時間を分けて投資し、地域や資産を分散する考え方のほうがなじみます。

安定重視なら「個別株だけ」に偏らない

株式投資というと、特定の会社の株を自分で選ぶイメージを持ちやすいかもしれません。ただ、老後資金対策として安定性を重視するなら、個別株だけに偏るのは慎重に考えたいところです。特定企業の業績や不祥事の影響を受けやすく、値動きも大きくなりがちだからです。

日本取引所グループも、投資先を一つに限定せず、異なる値動きをする商品を組み合わせる「分散投資」の考え方を紹介しています。老後資金対策として株式投資を使うなら、個別株だけでなく、株式を組み入れた投資信託やバランス型の商品も含めて考えるほうが安定重視の発想に近づきます。

高配当株だけで老後を支えようとしない

老後資金対策では、「配当金で生活費を補いたい」と考える人もいます。確かに、配当収入は魅力的に見えますが、高配当株だけに資金を集中すると、業種の偏りや個別企業のリスクが大きくなりやすくなります。減配や株価下落が起きれば、期待していたほど安定しないこともあります。

受け取り重視でも分散は必要

配当を重視する場合でも、複数銘柄に分ける、投資信託も使う、生活費の全額を配当に頼らないといった工夫が欠かせません。老後資金対策では、収入源を一つに決め打ちするより、年金、預貯金、配当、必要に応じた取り崩しを組み合わせるほうが現実的です。

NISAを使うなら「商品選び」が重要になる

NISAは非課税で運用できる制度ですが、制度そのものが安定性を保証してくれるわけではありません。NISA口座の中で何を買うかによって、値動きの大きさは変わります。安定重視で考えるなら、値動きの激しい個別株を短期売買するより、幅広く分散された投資信託を軸にしたほうが続けやすい場合があります。

投資信託協会も、投資信託は株式や債券などに分散投資する商品だと説明しています。株式投資をしたいが個別銘柄選びに自信がない人にとっては、分散された形で株式へ触れられる選択肢として考えやすくなります。

老後資金対策で株式投資が向く人

株式投資が向くのは、生活費の予備資金を現金で確保できていて、すぐには使わない資金があり、値下がり局面でも持ち続けられる人です。また、値動きがあることを理解したうえで、短期で結果を求めずに続けられる人にも向いています。反対に、少しでも減ると不安が強い人や、近いうちに使う資金しかない人は、投資額を抑えるか、別の選択肢を優先したほうがよい場合があります。

株式投資は「一部」として使う考え方が合いやすい

老後資金対策で株式投資を取り入れること自体は、必ずしも無理のある話ではありません。ただし、安定重視で考えるなら、老後資金の中心をすべて株式に置くより、預貯金や債券的な資産と組み合わせ、その一部として使うほうが現実的です。近く使うお金は守り、長く持てる資金の一部で株式投資を行う。この分け方のほうが、老後資金全体のバランスを取りやすくなります。

株式投資は、老後資金を大きく増やすための賭けではなく、長く持てる資金の価値を維持・成長させる手段の一つとして考えるほうが無理がありません。なお、投資には元本割れの可能性があるため、生活費や緊急時資金まで無理に運用へ回さないことが大切です。

出典:日本取引所グループ「ライフプランとお金②~資産形成の基本」

出典:投資信託協会「投資信託ガイド」