老後資金対策で投資を考え始めると、「少しでも増やしたい」という気持ちが強くなりやすくなります。ただ、老後のお金は生活そのものを支える資金でもあるため、現役時代以上に避けたい失敗があります。大切なのは、うまく増やす前に、やってはいけないことを知ることです。

失敗しやすい人の共通点1 生活費まで投資に回してしまう

老後資金対策で最も避けたいのは、近いうちに使う生活費や医療費の予備まで投資に回してしまうことです。金融庁は、資産形成の基本として「家計管理とライフプランニング」を挙げています。つまり、投資は家計の土台が整ったうえで考えるものであって、生活費の代わりではありません。

相場が下がったタイミングでお金が必要になると、不本意な価格で売却せざるを得ないことがあります。老後資金対策では、使うお金と育てるお金を分けることが最優先です。

現金で持つべきお金を先に決める

失敗を避けるためには、まず何年分の生活費を現金で持つかを考えることが大切です。すぐ使うお金を確保したうえで、それ以外の余裕資金を運用に回すほうが、値動きにも落ち着いて向き合いやすくなります。

失敗しやすい人の共通点2 一括で大きく始めてしまう

退職金やまとまった預貯金があると、一度にまとめて投資したくなることがあります。しかし、投資経験が少ないまま大きな金額を一括で入れると、下落時の心理的な負担が大きくなりやすくなります。金融庁は、積立投資について「あらかじめ決まった金額を続けて投資すること」であり、高いときにだけ買ってしまうことを避けやすいと説明しています。

老後資金対策では、効率よりも続けやすさが重要です。大きく始めて不安になり、途中でやめてしまうより、無理のない金額で段階的に始めるほうが失敗しにくくなります。

失敗しやすい人の共通点3 「おすすめ」だけで商品を選ぶ

ネットやSNSで見かけた人気商品、金融機関から勧められた商品を、そのまま買ってしまうのも危険です。老後資金対策では、自分がどの程度の値下がりなら受け入れられるか、いつ使う予定のお金なのかが重要で、人気だけでは判断できません。

特に個別株やテーマ型の投資信託は、値動きが大きくなることがあります。商品名だけで判断するのではなく、何に投資するのか、どのくらい価格が動く可能性があるのかを確認したいところです。

制度と商品を混同しない

NISAは便利な制度ですが、非課税であることと、安全であることは別です。NISA口座で何を買うかによってリスクは変わります。「NISAだから安心」と思い込むと、値下がりしたときに後悔しやすくなります。

失敗しやすい人の共通点4 分散せず、一つに偏る

一つの銘柄、一つの国、一つのテーマだけに資金を集中させると、当たったときは大きく見えても、外れたときのダメージも大きくなります。金融庁や日本取引所グループは、資産形成の基本として分散投資の考え方を紹介しています。異なる値動きをする資産を組み合わせることで、リスクを抑えやすくなるという考え方です。

老後資金対策では、特にこの分散が重要です。老後のお金は取り返しがききにくいため、一つの判断ミスが生活に直結しやすくなります。個別株だけでなく、投資信託や預貯金、債券的な資産も組み合わせて考えるほうが現実的です。

失敗しやすい人の共通点5 取り崩し方を考えていない

老後資金対策では、「どう増やすか」ばかりに意識が向きがちですが、老後に入ると「どう使うか」も同じくらい重要です。積み立てる段階では問題がなくても、使う時期や方法を考えていないと、必要な場面で慌てて売却しやすくなります。

金融庁のNISA特設サイトでは、保有資産は部分的に売却でき、運用を継続しながら取り崩していく考え方も示されています。老後資金対策では、買う前から「どの資金を、いつ、どのように使うか」を考えておくほうが、無理のない運用になりやすくなります。

失敗しやすい人の共通点6 うまい話を急いで信じてしまう

老後資金への不安が強いと、「高利回り」「元本保証に近い」「特別な人だけに紹介している」といった勧誘に心が動くことがあります。金融庁は、未公開株や社債、ファンドなどを使った悪質な投資勧誘に注意を呼びかけています。特に、高齢者を狙ったトラブルは以前から繰り返し問題になっています。

分からない商品には手を出さない

内容を十分に説明できない商品、仕組みが理解できない商品、急いで判断を迫られる提案には慎重でいたいところです。老後資金は「増やせるか」より、「失わないか」の視点も同じくらい重要です。

老後資金対策で大切なのは「勝つこと」より「失敗しないこと」

投資で失敗しやすい人には、生活費まで回す、一括で始める、人気だけで選ぶ、分散しない、取り崩しを考えない、うまい話を信じるといった共通点があります。どれも、焦りや不安から起こりやすい行動です。老後資金対策では、大きく増やすことより、続けやすく、取り返しのつく範囲で進めることのほうが大切です。

老後資金の投資は、特別なテクニックより基本を守ることが結果を左右します。使うお金と育てるお金を分け、長期・積立・分散を意識し、分からない商品には近づかない。この姿勢のほうが、老後資金対策では失敗を防ぎやすくなります。なお、投資には元本割れの可能性があるため、生活費や緊急時資金まで無理に運用へ回さないことが大切です。

出典:金融庁「あやしい投資勧誘にご注意!」